『深呼吸宣言1 断橋』 橘川幸夫(写真+テキスト) 《オンデマンド》
■内容紹介
「見ることと伝えること」を生涯のテーマにしてきた著者による写真とテキストによるメッセージ・ブック。「リアルとは正確な表現ではない。正確な関係だ」
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■横町の哲学者 by 濱田逸郎(江戸川大学 社会学部教授)
橘川幸夫は『横丁の哲学者』だ。
「深呼吸宣言」を読むとそれが良くわかる。
「深呼吸宣言」は、橘川がこれまで書き重ねてきた文章の中から、彼を慕う若者たちが珠玉のフレーズを選び出し、橘川が撮りまくったデジカメ写真とあわせ編集したアフォリズムである。
「アフォリズム」。大辞林によると《簡潔な表現で人生・社会などの機微をうまく言い表した言葉や文。金言。警句。箴言(しんげん)。「芸術は長く、人生は短し」の類。》
パスカルの「パンセ」、芥川龍之介の「侏儒の言葉」などに見られる表現形態だ。
これらのいずれもが、アフォリズムを意図して書かれたもの。
しかし、「深呼吸宣言」は文章の断片をピックアップしたらできちゃったというところがすごい。いまはやりの「できちゃった出版」なのである(?)。
橘川自身があとがきで《僕の文章は評論でもエッセイでもなく、音楽の、フレーズだと思ってきた。》と書いているところにその秘密があるのだろう。
読み飛ばせばものの15分で読み終える分量だが、味わいつつ読むと大変だ、読者に行間を読むことを強いる。
書くほうはもっと大変だろう。短いものほど筆者の人間性や見識があらわになってしまうのは、メールと同様だ。
人間性にさもしさが勝ると、「世故に長けたコトバの連なり」になったり、「鼻持ちならない浮ついた言葉」になる。
橘川が学生の頃から一貫して、損得勘定を省みず好きなこと信じることに、周辺の友人を巻き込みつつ向こう見ずな試行錯誤を重ね、ドラマチックな浮き沈みを繰り返してきたからこそ、「含蓄ある味わい深いコトバ」や「はたとひざをうつ本質的表現」を紡ぎ出せたのだろう。
例えばこれはどうだ。
■ロックとは表現欲求より、コミュニケーション欲求が勝ってる状態のことだ。
そうだよなぁ。だからロッカーは歌が下手でもかまわないのだ。
■信念を持たない奴は嫌いだが、自分の信念を疑わない奴はもっと嫌い。
多いんだよ、この手のやつが最近は。ジョージ・ブッシュと彼のポチなんて、この代表だよな。
橘川幸夫の囚われないライフスタイルが、時代をうがつ自由なアフォリズムを生み出し、横丁の哲学者を誕生させたのである。
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体裁:B6判・本文200ページ
発行:2006年2月
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