椅子と身体 黒川雅之著
椅子を知ると、人間がわかる。
人間を知ってこそ、椅子がわかる。
本書は希代の建築家にしてデザイナーである黒川雅之による、椅子を考え尽くしたデザイン書・哲学書である。
建築家の多くが、人生で一度は椅子をデザインする。
それはなぜか。
椅子に、建築家の哲学が表れるからだ。
なぜ人間は椅子に座るのか。それを黒川雅之は、自由を、創造を得るためと見つけた。椅子は、休むために座るだけの存在ではない。人間は創造するために椅子に座ることを、彼は発見した。
その視点から椅子を考えると、椅子のことを考えているのにもかかわらず、人間を考えることになる。
人間とは何か。
人体とは何か。
黒川雅之は思いを巡らす。一度、プリミティブな原型に思いを馳せ、やがて自らがつくるべきものに返る。それが黒川雅之のアプローチだ。いつもそうだ。
結果、彼は悟った。椅子を知ると、人間がわかる。人間を知れば、椅子がわかる。
椅子こそが人間だった。
人間には椅子こそが必要だった。
人間を知らなければ椅子をデザインできない。
椅子がなければ人間は創造できない。
あなたは本書で、本当の椅子を知るだろう。
真に考えられた椅子の向こうには、人間を分析し定義する本当の「思想」がある。そのことを知らずして、本当の椅子を見つけることはできない。
今、あなたの中にある「椅子」像を根底から覆す、黒川雅之の椅子論。ご覧あれ。 (編集担当・東北芸術工科大学 文芸学科 専任講師 野上勇人)